​園長エッセイ

石井しのぶ

ぽんておうちえん園長

子どもの笑顔が

未来を照らす

 冬の日差しの中、人間禅道場の庭には子どもたちの笑い声や、時には大きな泣き声が響き渡ります。まだ少し風が冷たく、出来れば室内で遊んでほしいな、と考えるのは大人たち。子どもは僅かな晴れ間をみつけては外に飛び出して行きます。

 砂遊びに夢中になる子、坂道を三輪車で駆け降りたり、山によじ登っては泥だらけになって転げまわる子。丸太渡りがうまく出来ずに泣き出す子。何度目かで上手に渡れた時のうれしそうな顔!

 道場の方がいらっしゃると、待ってましたとばかりに大きな声で挨拶します。みなさんに応えていただくとうれしくて、何度も何度も申し訳ないくらいに声を張り上げます。そうした人との関わりや自然とのふれあいの中で、子どもたちはたくさんのことを学び、経験しながら成長していきます。それは私たちが言葉で伝える何倍もの効果があるようです。子どもたちのスポンジのような心は、良いことも悪いことも驚くほどの早さで吸い上げていきます。

 人間禅の敷地をお借りして保育園を開室してから、今年(平成27年)で4年目を迎えました。前身は市川真間駅近くのマンションの一室を借りた保育園でしたが、経営の母体となっていた民間会社の倒産により廃園に追い込まれました。途方に暮れた子どもたちと保護者の方たちの強い要望に応えるため、当時主任だった私があとを引き受けることになりました。未経験ながら手続きや場所探しに奔走する毎日でしたが、そんな時、声をかけていただいたのが、人間禅の佐瀬代表でした。初対面の私の話を熱心に聴いてくださり、その場で快く承諾してくださいました。最悪の場合、休職や離職を考えて精神的にも追い込まれていたお母さんたちが喜び、安心されたのは言うまでもありません。

 開室当初は月極め3名からのスタートでしたが、現在は0歳から4歳まで22名の子どもたちが登園しています。3年間で関わった子どもの数は、一時保育を含めて100名を超えました。保護者の方を含めると、300人以上の方がぽんておうちえんと何らかしらのつながりを持っていただいたことになります。認可保育園への申請を出されている方は決定次第そちらの園へ移行することになりますが、出来ればずっとここで過ごしたかった、と言ってくださる方がほとんどです。慣れた場所でずっと成長を見守ってあげたいのはもちろん私たちの思うところでもありますが、現状では人数に応じた施設面積の確保や保育士の数など、基準を満たす対応が難しく、みなさんのご希望に添えないことがとても残念です。

 昨今、待機児童という言葉を毎日のように耳にします。世の中に目を向けると夜間保育や病児保育、早期教育など大人の都合に合わせた保育に注目が集まっています。待機児童解消のためにビルやマンションの一室で一日中過ごす子どもたち。問題を解決するための方向性としては間違ってはいないのかもしれません。でもそれは子どもたちにとって、優しい社会と言えるでしょうか。子どもの声が騒音規制に触れて、声を出してはいけないと注意されなければならない保育園もあるようです。一日中大きな声で笑い、泣き、歌い、走ったり転んだり。子どもが子どもらしく過ごせる日々を見守ることの出来る幸せを改めて感じる毎日です。

 ぽんておうちえんの「ぽんて」はイタリア語で〝橋″を意味します。親と子の架け橋、地域や社会への架け橋となれればという思いがありました。でも本当の架け橋は未来へとつなぐ子どもたち自身です。子どもの笑顔が大人の笑顔となり、ひいては明るい社会へとつながることを期待します。子どもの未来は日本の未来。そして子どもの育ちを支えていくのは私たち大人です。親や保育者だけでなく、これからもたくさんの人に見守っていただければと願っております。

 

■筆者プロフィール

石井しのぶ 東京都生まれ。千葉県立国分高校、貞静学園保育専門学校(現短大)卒業後、船橋市高根台文化幼稚園に勤務。その後、学研幼児教室指導員を経て、松戸市南台保育園非常勤、矢切幼稚園、平成20年4月よりぽんて保育園に勤務。同24年、ぽんておうちえん設立。現在に至る。